過食・食べすぎてしまう悩み

コントロール不能の「食べたい」衝動

人よりも明らかに多い量を食べてしまい、苦痛がある

人前ではそこまで食べ過ぎないが、一人になると食べてしまう

自分の意志では「食べたい」という衝動を制御できない

過激なダイエットを始めたり、食べ過ぎる自分へのダメ出しが止まらない時がある

食べたいスイッチが入ると、健康やお金のことは考えられない

食欲のコントロールが出来ない自分を、ひどく醜く思う

………

「食(過食)」に関するお悩みは、とても身近でありながら、現実の人間関係では共有されにくい秘密性の高いテーマでもあります。

なぜなら、「食べることをやめられない自分は恥ずかしくて醜い」という感覚を持っている方が多いからです。

そして、その原因を意志が弱いせいだと思い込んで、ますます抜け出せなくなります。

特に女性の場合、食の問題は容姿やPMS、美的感覚といった別のお悩みを増長させやすい傾向があるため、苦しんでいる方は少なくありません。

食べ過ぎる(過食)2つのタイプ

「食べ過ぎてしまう」には主に2タイプあります。

ひとつめは、「食べ過ぎてしまい、代償行為がある」タイプ。

もう一つは「食べ過ぎてしまうが、代償行為のない」タイプです。

食べ過ぎてしまい、代償行為がある

代償行為というのは、「嘔吐」や「下剤の使用」「過剰な運動」など、食べ過ぎてしまった分をなくそうと必死に行う行動のことを指します。

「体重をこまめに測る」「体型をよくチェックする」方も多いです。

食べ過ぎた(過食)分の埋め合わせを必死に行うため、体型や体重が大きく変化することはあまりありません※

しかし、繰り返す嘔吐や過剰な代償行為は健康への被害が心配されます。

また、過食と代償行為への自己嫌悪、食べてしまったことへの敗北感などがとても大きく、精神的にも不安定になりがちです。

このような傾向が強いと、「摂食障害群」の「神経性大食症」に当てはまるケースがあります。

※食べる量を減らし、過剰な減量行為によって体重が必要以上に減少するケースは「神経性やせ症(拒食症)」の扱いになります。

食べ過ぎてしまうが、代償行為がない

食べ過ぎるものの、代償行為を伴わないケースは、その傾向が強いと「過食性障害」と呼ばれます。

代償行為がないため、体重は正常か過体重となる場合がほとんどです。

そのため、食べれば食べるほど自信を失い、容姿を気にしておしゃれや外出を楽しむ余裕がなくなっていくこともあります。

また、行動としての代償行為はなくとも、食べてしまう自分を責めたり、代償行為を行わないことへの劣等感のような感情を抱えるケースが見られます。

体型よりも小さなサイズの服を購入して自分に発破をかけたり、わざと劣等感を感じやすい場所に身を運んで、自分を追い込もうとします。

キーワードは罪悪感と自己嫌悪

過食の問題の根本は、「過食」そのものよりも「それによる精神的な苦痛」にあります。

たとえ過食であっても、もしそれが本人にとって幸せならば、せいぜい問題は健康面への心配だけ。

精神的な苦痛も、「健康のために食事を管理する」という部分にとどまるでしょう。

しかし、過食の悩みを抱える人の多くは過食を楽しんでいるわけではありません。

そこには衝動があるだけで、本物の満足感や幸せはありません。

「本当は食べたくないものを大量に詰め込んで、どんどん苦しくなっていく。」

それが過食に悩む人の精神的な苦痛につながります。

そして、食べ物を用意し、胃に詰め込むのは他ならぬ自分自身の手であることから、過食者はいつも自己責任を感じます。

過食者は、自分の食欲をコントロールできないことを自分の責任だと恥じ、

「意志の力で制御しなければ」

「食べてしまった分、罰を与えなければ」

と、ひたすら精神論・努力論に走ってしまいます。

そして、「過食に打ち勝つ」ことを考えるようになると、

過食者は、もう何度も挫折してきた「過食をやめる」という行為に再び挑まなければなくなります。

この一連の流れを「繰り返させる」ものが、罪悪感や自己嫌悪なのです。

本来であれば、過食そのものではなく罪悪感や自己嫌悪へのアプローチの方が優先されるべきですが、過食を自己責任のように感じる過食者にとっては、「過食をなくす」ことが大切に思えてしまいます。

考えられる過食の原因

過食が止まらなくなってしまう背景要因や原因として、下記のことが考えられます。

親子関係(特に母娘)に悩みやひずみがある

対人ストレス

文化的な背景(やせていた方がかわいい、など)が負荷をかけている

「食」の悩みを抱える方は、親子関係、特に母との間で心のすれ違いや悩みを抱えてきた場合があります。

この場合、必ずしも母親に対して怒りや恨みを感じているわけではありません。

むしろ母親をかばい、「母に問題があった」と他者に指摘されることを過剰に恐れるような方も少なからず見受けられます。

また、「誰かと会った後」「学校や職場から帰宅した後」に過食をする癖を持つ方も一定数いらっしゃいます。

このような場合は、主に対人のストレスが引き金になっていると考えられます。

過食の傾向がある方のカウンセリングをしていると、人の目が気になったり、他人からの評価におびえるエピソードがたくさん出てきます。

このような方が気にする「人の目」とは、結局「親の目」であり、親の目を気にしてきた、という結論に行きつくことも多いのです。

意志力の問題ではないことを受け入れる

過食から抜け出したいと思った時、まずは今までの思考回路を手放す必要があります。

自分を責めてもやめられなかった人は責めるのをやめる。

代償行為をしてもまた過食をしてしまうなら、代償行為をやめる。

自分に追い打ちをかけて頑張らせようとしていたのなら、それをやめる。

今まで同じことを繰り返している場合、その一連の流れの中に「繰り返す要因」が紛れていることがあるからです。

とはいえ、過食が続いている状態で何かをやめるのは、とても難しいことでもあります。

それに短期間でどうにかしようと思えば、結局自分を追い立てるやり方と変わりません。

過食以外の悩みにも目を向けつつ、ゆっくり自分を見つめる時間が必要です。

※この記事では、診断や入院に満たないレベルでの過食について述べています。
クライアントさまの状態によっては、医療機関の受診をお勧めしております。

カウンセリングについて

参考:『カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開』
2016年5月/メディカル・サイエンス・インターナショナル
ベンジャミン J.サドック/編著 バージニア A.サドック/編著 ペドロ ルイース/編著 井上令一/監修 四宮滋子/監訳 田宮聡/監訳